はじめに:コウモリは駆除が必要な害獣である理由
コウモリといえばハロウィンのデザインや映画の『バットマン』のモチーフで知られていますが、実は日本でも身近な場所に生息している種類があります。
それは「アブラコウモリ」という体長5㎝ほどの小型のコウモリで、翼を広げた長さは18~24㎝程度、成獣は灰色がかった茶色い体毛をしているのが特徴です。
野生動物ではありますが好んで人間の生活圏に棲みつき、群れをなしてビルの隙間や住宅の屋根裏などに巣を作ります。
しかもアブラコウモリは病原菌やノミ・ダニのキャリアであり、大量の排泄物が溜まると建物が傷む原因となり、活動時に群れが発する鳴き声は騒音の害にもなって人間生活に悪影響を及ぼします。
しかしコウモリは野生動物保護の法律で守られており、無許可で捕獲したり殺傷したりした場合は処罰の対象となってしまいます。
しかしそんなアブラコウモリは、具体的にはどのような地域に多く出没するのでしょうか。
本記事では駆除が必要なコウモリについて、相談件数増加の理由と多く分布している地域はどこなのかを解説します。
※以下、本記事ではアブラコウモリを単に「コウモリ」と表記します。
コウモリの駆除件数は増加の傾向。その理由は?
PRTIMESが報じた害獣駆除対策センターの情報によると、2023年秋はコウモリの被害が例年よりも20~30%増加したそうです。
コウモリは冬眠する習性があるため冬季の前には栄養を蓄えるための捕食行動が活発になりますが、例年の長引く残暑で活動期間が延びたことが被害増加の一因と考えられています。
またコウモリの天敵となるカラスの個体数が減少しており、このことも状況に拍車をかけたと指摘されています。
さらに一般社団法人日本有害鳥獣駆除・防除管理協会のWEBサイトでは害獣(ネズミ・イタチ・ハクビシン・アライグマ・コウモリ・その他)に関する相談件数のデータを公表しており、そのうちコウモリは368件でした(2024年3月現在)。
内訳は「①駆除の依頼」が269件、「②駆除方法の相談」が99件で①についてはネズミの489件に次いで第2位、②については第1位となっています。
なお、この統計では相談件数総合はネズミが第1位、2位のコウモリに次いで3位はイタチでした。
これらのことから、コウモリは人間にとって非常に身近な害獣の代表格であり、環境変化などの要因から実際の駆除件数も増加傾向にあることが認められます。
コウモリが特に多く分布しているのはどの地域?
アブラコウモリは北海道を除く全国に生息していると説明されることがありますが、昨今では北海道内での事例もありコウモリの流入が認められます。
ただ、特に駆除件数の多い地域もあり、分布には一定の傾向があるのも事実です。
そこで環境省自然環境局の生物多様性センターが公開している「日本の動物分布図集(2010)」を参考に、アブラコウモリがどの地域に多く分布しているのかを見てみましょう。
同データでは「分布情報が不足している」との注記があり、十分な調査ではないことを示していますが、ある程度の傾向を掴むことができるでしょう。
以下に「日本の動物分布図集(2010)」に記録されたコウモリの分布について、特徴的ないくつかの地域例を挙げました。
東北地方
動物分布図集におけるコウモリ分布の最北例は青森県です。
それも津軽半島北東端の外ヶ浜町あたりがマークされており、文字通り本州の最北端までコウモリが生息していることを示しています。
青森県下では他にも八戸市など、岩手県との県境近くで太平洋側に沿って分布が確認されています。
また、宮城県も太平洋沿岸を中心に数多くのコウモリ分布地がマークされています。
人口約110万人という大都市の仙台を擁することから、コウモリが営巣しやすい構造物も多くあるためと考えられます。
秋田県を除くその他の東北地方でも、人口密集地である県庁所在地にコウモリの分布が見られる傾向は同じです。
甲信越地方
新潟県では新潟市など人口密集地でコウモリの分布が見られますが、離島の佐渡島にもマークが認められることから、人間の行き来と共に流入していったことが推測されます。
長野・山梨も県庁所在地近辺が分布域として記録されています。
関東地方
東京都も都心部に集中するようにコウモリの分布がマークされています。
近郊の関東地方ではいずれも県庁所在地近辺にマークがあり、人口の密集に比例するようにコウモリも棲息している様子をうかがえます。
北陸地方
「日本の動物分布図集(2010)」のデータでは福井県にはマークがありませんが、現地ではコウモリ駆除業者が営業しているため棲息していないわけではありません。
石川・富山ともにやはり県庁所在地周辺の分布が認められます。
中部地方
中部地方では特に愛知県のコウモリ分布が卓越し、名古屋から岐阜県岐阜市あたりにかけてマークが集中しています。
また静岡県では伊豆半島での分布が多く見られる点が特徴です。
近畿地方
近畿地方でのコウモリ分布データは大阪府に集中しており、兵庫県では尼崎市や神戸市のあたりにマークが見られます。
当然他の近畿各府県にもコウモリは棲息していると考えられますが、2010年時点のデータでは収集しきれなかったものと考えられるでしょう。
中国地方
中国地方では島根・鳥取の一部、そして特に岡山県の瀬戸内海側で極端な集中が認められます。
近年では岡山市でコウモリ被害の例が急増しているという報告もあり、特徴的な分布の例といえるでしょう。
四国地方
四国地方では岡山県対岸の香川県で特に多くのマークが見られますが、徳島・愛媛・高知とまんべんなく分布していることが特徴です。
特に高知市周辺には多く、暖かい気候を好むコウモリの習性との関連を思わせます。
九州・沖縄地方
コウモリの分布に関するデータの一部を参照しましたが、駆除するためには最適な時期と時間帯を選んで実施する必要があります。
時期としては年に2回あり、4月~6月にかけての冬眠から目覚めて子供を出産するまでの間が最初のシーズンです。
次は9月~10月にかけての幼獣が成長して自力で飛べるようになり、コウモリが発情期を迎える冬眠前の期間です。
この時期のコウモリは夜の行動が活発になるため、駆除の施策を行う際に住処から追い出しやすく作業をスムーズに進められる可能性が高くなります。
コウモリは夜行性で昼間は眠っていますが夕方以降に虫などの捕食を目的に飛び回ることが理由で、日没頃以降の行動が活発化する時間帯を狙って駆除を行うと効果的です。
このようにコウモリの生態に合わせて活発に行動するシーズンや時間帯を見計らって駆除をすることが重要ですが、日本全国に分布していることから地域ごとにその最適なタイミングは異なります。
例えば日没(日の入り)について4月半ばの青森県では18時16分ごろ、沖縄県は18時52分頃となっています。これが10月半ばになると青森県で16時57分ごろ、沖縄県はおよそ18時と地域と季節によって大きな差が生じます。
このことからコウモリが行動を活発化させるシーズンの長さや時間帯が地域ごとに異なることがわかり、それぞれの土地に適したタイミングで駆除を行うことが重要です。
まとめ:日本全国に分布しているコウモリの駆除は専門業者に依頼するのがおすすめ!
コウモリ駆除の件数が増加していること、そして環境庁のデータをもとにどのような地域での分布が認められるのかについて解説しました。
ノミ・ダニ・病原菌を運んだり騒音や糞害の元になったりするコウモリは害獣の一種であり、もしも自宅の屋根裏や軒下に棲みついた場合にはできるだけ早く駆除することがポイントです。
しかし鳥獣保護管理法で保護されていることから無許可での捕獲や殺傷は処罰の対象となること、群れをなして建物の高い所や狭い所に棲みつくことなどの特徴により、個人での駆除にはさまざまなリスクが伴うのも事実です。
また、これまで見てきたようにコウモリ駆除には最適なシーズンと時間帯があり、地域によって差があることからその土地に棲息するコウモリの生態に関する知識も必要です。
そこでおすすめなのが、コウモリ駆除の専門業者に依頼することです。
プロフェッショナルとしての高度な知識と技術を用いて駆除後の処置まで安全に実行し、専門家の見地から防除のための適切なアドバイスも得られます。
もしコウモリの害で悩むことがあれば、このような専門業者への相談も視野に入れてみてはいかがでしょうか。