はじめに：コウモリはなぜ駆除する必要があるの？

夕方になると街灯の周りや住宅街を、無数のコウモリがキィキィと鳴きながら飛び回る光景を目にすることがありますね。

日本で人間の生活空間に現れるコウモリの多くは、体長5㎝ほど、翼長18～24㎝程度で灰色がかった茶色い体毛をした小型の「アブラコウモリ」という種類です。

よく見るとかわいらしい顔をしていると感じるかもしれませんが、実は人間の健康や建物の強度に悪影響を及ぼす害獣の一種でもあります。

それというのもコウモリは病原菌やノミ・ダニのキャリアとなり、糞害で建物にダメージを与えたり鳴き声が騒音の害になったりするためです。

しかしコウモリは法律の規制上、無許可での捕獲や殺傷が認められていないため駆除には特別な配慮と方法が必要となります。

その一つが、コウモリを追い払うのに効果があるとされる「音」。

本記事ではコウモリ駆除にはなぜ「音」が有効であるのか、その理由や仕組みと効果的とされる音のパターンなどについて解説します。

※以下、本記事ではアブラコウモリを単に「コウモリ」と表記します。

コウモリ駆除に「音」が有効とされる理由とは？

コウモリ駆除のためにある種の「音」が有効とされる理由には、コウモリの持つ特有の性質が深く関係しています。

昼行性など一部の種類を除いてコウモリは視力が非常に弱く、日本の住宅街に現れるような夜行性のものはほぼ目が見えていません。

それがなぜ自在に飛び回ることができるのかというと、自ら超音波を発して物体に反響する様子を感知することで空間の構造を立体的に把握する能力があるためです。

これは航空機などで使われるレーダーや、あるいは視界のきかない海中で行動する潜水艦のソナーなどと同様の仕組みであり、コウモリにとっては「音」がある種の生命線になっているといえるでしょう。

コウモリ駆除に音を利用することが効果的とされるのはこうした特性をうまく利用するもので、正確には嫌いな音を発するのではなく超音波を攪乱することが目的です。

つまりコウモリが発している超音波に別の音波を当てることで、コウモリの空間認識を混乱させることが音による駆除のポイントとなります。

コウモリが音の反響で自身の位置や周囲の構造物を捉えていることから、音波が乱されると正確にその機能を発揮できなくなるという現象を利用したのが「音による駆除」の基本的な仕組みです。

コウモリ駆除に効果的とされる音のパターンは？

超音波を発して行動するコウモリの生態を利用し、音を使って混乱させることで駆除に役立てる方法を述べましたが、では具体的にどのような音が効果的なのでしょうか。

結論からいうとどの音も絶対的な効能でたちどころにコウモリがいなくなる、といったものではありません。

ですがやはりコウモリの行動をある程度阻害することで住処から追い出し、再び侵入してこないような措置へとつなげることは可能です。

以下、コウモリ駆除に効果があるとされている音のパターンを2例挙げました。

ラジオの音

コウモリ駆除に効果があるとされる音源の一つに、ラジオ放送が挙げられます。

これはラジオがさまざまな周波数の音を受信しており、中にはコウモリが空間認識に使っている超音波が含まれていることから、この音域でコウモリの行動を撹乱して駆除につなげられるというものです。

超音波は通常、人間の聴覚では捉えることができない周波数帯のものがあるため、ラジオ放送については音のボリュームやチャンネルはさほど関係ないとされています。

電源を入れたラジオをコウモリの住処の近辺に設置することで、行動のためにコウモリが発している超音波を撹乱できますが、実際の効果についてはケースバイケースであるのが現実です。

必ずコウモリ駆除に効果があると保証されているわけではありませんが、自治体の中には方法の一つとして紹介しているところもあり、特別な機材が無くてもすぐに試してみられるのは大きなメリットでしょう。

ただしコウモリが住処とする場所は家屋の屋根裏や軒下、建物の高層階の隙間など高所であるケースが多いため、設置する際には十分な注意が必要です。

誤ってラジオが落下したり、電源が入ったままの状態でショートしたりするとコウモリの害とは別問題での事故になりかねません。

20kHz～50kHzの音

コウモリの駆除に効果的と考えられる音は、具体的には20kHz～50kHzとされています。

繰り返し述べているようにコウモリが発するのは超音波であり、20kHzの音が超音波に該当するためです。

音波と音波がぶつかるとどうなるか例えてみましょう。

静かな水面に小さい石を一つ落とすと波紋がきれいな同心円状に広がりますが、いくつも石を投げ込むと波紋同士がぶつかったり打ち消し合ったりして水面が乱れてしまいます。

コウモリにとって外部から別の超音波を当てられるのはこのような状態に等しく、したがって空間を正しく認識するのが困難となります。

人間の耳が捉えることのできる音は下限20Hzほどから上限20kHzほどまでで、一般的によく聞こえると感じるのは2kHz～4kHz程度とされています。

つまりコウモリは人間の10倍以上も高い周波数帯の音を行動のために使っていることになり、駆除用の超音波は人間の耳にはほぼ聞こえないものです。

こうした音は専用の超音波発生器や、あるいはスマートフォンの駆除用超音波アプリといったものもあります。

ただしアプリの方は効果の確実性が高くはないという声があり、なおかつ常時設置しておくことも不可能であるため応急的に試してみるといった使い方がいいかもしれません。

超音波発生装置についても、作業場の安全確保を含めて設置には十分な注意が必要です。

音によるコウモリ駆除の効果は実は一時的なもの？

別の音でコウモリの発する超音波を撹乱して駆除する方法を述べましたが、実はその効果は一時的なものに留まるケースが多いとされています。

それというのもコウモリが自ら発している超音波の周波数帯は一定ではなく、かなり自由に変更して使い分けることができるためです。

つまり撹乱用の超音波を当てても、コウモリは時間と共にそれ以外の音域を用いて行動を補正することができ、特定の音波にはすぐに慣れるという能力を持っているのです。

したがって音によるコウモリ駆除は恒久的な効果を期待できるものではなく、一時的に追い払ってその間に再侵入させないよう住処への入口を塞ぐなどの措置を併用するのがセオリーといえます。

音でコウモリを駆除するのに適した季節と時間帯は？

コウモリの駆除を行うのには適した時期と時間帯があり、音を用いた方法を選ぶ場合も同様です。

まず4月～6月の春から初夏にかけての、冬眠から目覚めて子供を出産するまでの間が最初のシーズン。

そして9月～10月の秋にかけての、子どもが自力で飛べるようになってから発情期を迎える冬眠前の期間です。

この時期はコウモリが夜に活発に行動するため、駆除の施策を行う際にも敏感に反応して作業がスムーズに進む可能性が高くなります。

また夜行性のコウモリは昼の間は眠って過ごしていますが夕方以降にエサを求めて飛び回るため、日没頃以降の行動が活発化する時間帯を狙って駆除を行うと効果的でしょう。

これも先に述べましたがコウモリの駆除は追い払うこと、そして住処に再び侵入させないことが基本です。

コウモリの生態に合わせて活発に行動するシーズンや時間帯を見計らい、最大限の効果を発揮するタイミングで駆除を行いましょう。

音でコウモリを駆除する場合も法律に要注意！

これまでコウモリの駆除に音を用いることについて解説してきましたが、そもそもなぜ超音波という間接的な方法が必要なのでしょうか。

それというのも、実はコウモリが法律で保護された動物であり、許可なく捕獲・殺傷すると処罰の対象となるためです。

該当する法律は一般に「鳥獣保護管理法」と呼ばれ、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」が正式名称です。

違反すると1年以下の懲役あるいは100万円以下の罰金を科せられるため、過失で傷つけたり殺したりした場合を考慮すると個人でのコウモリ駆除にはリスクが付きまといます。

許可のない捕獲も処罰対象であるため、仮に親から離れて住処の外にいるコウモリの子どもを保護したとしても該当してしまいます。

このようなことから、例え超音波という安全性が高いと思われる駆除法でも、個人で実施するには十分な法的理解と注意が必要です。

まとめ：音によるコウモリ駆除も専門業者に依頼するのがおすすめ！

コウモリの駆除に音を用いること、そしてその仕組みと効果的なパターンについて、注意事項と共に解説しました。

ノミやダニ、または病原菌のキャリアになったり糞害・騒音の元になったりするコウモリは、もしも自宅の屋根裏や軒下に棲みついた場合にはできるだけ早く駆除することがポイントです。

しかし鳥獣保護管理法で保護されていることや比較的高所に群れをなして棲みつくこと、駆除に適したシーズンや時間帯があることなどから、個人での駆除に技術的な難しさとリスクが伴います。

そこでおすすめなのが、コウモリ駆除の専門業者に依頼することです。

プロフェッショナルとしての高度な知識と技術を用いて駆除後の処置まで安全に実行し、専門家の見地から防除のための適切なアドバイスも得られます。

もしコウモリの害で悩むことがあれば、このような専門業者への相談も視野に入れてみてはいかがでしょうか。