コウモリは害獣なのに法律で保護されている? 駆除の際に注意すべき「鳥獣保護管理法」とは?

はじめに:人間にとって身近なコウモリは害獣の一種! 駆除が必要な理由と関連する法律とは?
夜の住宅街や公園の街灯周りなど、ひらひらと不規則なはためきで飛び回る生き物を目にしたことがないでしょうか。
これは光に集まる虫を捕食するために飛んでいるコウモリで、都市部や住宅地などで見られるのはほぼ「アブラコウモリ」と呼ばれる種類です。
これは「オオコウモリ」と「ココモウリ」の2大グループに分類されるもののうち、後者に属するとても小柄なタイプのコウモリです。
アブラコウモリは成長すると灰色がかった茶色い体毛となり、サイズ感としては体長約5㎝、翼を広げた長さ約18~24㎝、体重5~10gほどになります。
ややもすれば少し不気味なイメージのあるコウモリですが、アブラコウモリはたいへんに小柄であることやよく見るとかわいらしい顔をしていることから、存外に親しみやすさを覚えてしまうかもしれません。
さらには昆虫類を主食としており、蚊やユスリカといった害虫を一晩で500匹ほども捕食するといわれ、このことからかつては益獣の一種であるとする場合もありました。
ところがコウモリはさまざまな病原菌のキャリアであり、接触などにより万が一発症した場合には生命に関わるリスクがあることが判明しています。
またノミやダニといったウイルスを媒介する生物が身体に寄生しており、特にマダニに噛まれると致死率の高い熱病を引き起こすケースがあるなど大きな接触リスクを伴います。
さらには住宅の屋根裏やビルの隙間などに群れをなして営巣し、特定の箇所に大量の排泄物を堆積させます。悪臭害の元となったり建物の構造物にシミや腐食などダメージを与えたり、こうした糞尿害も多大な損失をもたらします。
またコウモリの糞は乾燥すると粉塵となって舞いやすく、カビ菌の一種を含んでいることから、不用意に吸い込んだり皮膚や目・鼻・口の粘膜に触れたりすることで肺炎やただれ・かゆみの原因となる場合もあり非常に危険です。
そのうえ群れの個体数が増えると羽音や鳴き声の総体も比例して大きなものとなり、コウモリは夜行性であることから夜間の騒音害で不眠症や不安症を発症する事例も報告されているもなど、精神衛生や健康上の脅威ともなり得ます。
したがってコウモリは人間の生活圏に棲みついているのを発見次第できるかぎり速やかに駆除することが必要なものの、適切な方法とタイミングに関する専門的な知見・技術が必要です。
またコウモリは野生動物保護を目的とした法律で守られた生きものであることから、その取り扱いには法的な知識も不可欠です。
本記事では駆除が必要な害獣であるコウモリに関して、野生動物保護の法律とはどのようなものであるのかについて解説します。
※以下、本記事ではアブラコウモリを単に「コウモリ」と表記します。
コウモリも保護対象の「鳥獣保護管理法」とは?
コウモリは野生動物保護を目的とした法律で守られていることを先に述べましたが、この法律は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」が正式名称で、略して「鳥獣保護管理法」と呼ぶのが一般的です。
コウモリをはじめとした対象の動物を許可なく捕獲したり殺傷したりすると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金という重い処罰を科せられます。
そのためコウモリ駆除の専門業者はこの法律に則った知見と駆除技術を有し、あるいは特別な許可を受けて作業を実施します。
以下に鳥獣保護管理法の概略を見ていくことにしましょう。
鳥獣保護管理法の概要は?
鳥獣保護管理法とは「保護」と「管理」という言葉が並列している通り、野生動物の保護に加えて人間との関わりを管理していくという意図のもと制定されたものです。
2014年に旧・鳥獣保護法から改定され、従来は「保護」のみに焦点が当てられていましたが相次ぐ農作物・海産物等の獣害や野生動物棲息圏と人間の生活圏との接触から、その在り方に再考を求められた結果といえるでしょう。
鳥獣保護管理法の目的は?
鳥獣保護管理法が制定された目的については、少し長いですが条文における定義を以下に引用してみましょう。
「この法律は、鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するとともに、猟具の使用に係る危険を予防することにより、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保(生態系の保護を含む。以下同じ。)、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資することを目的とする。」
と、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」には記されています。
すなわち野生動物を単に保護するだけではなく、増えすぎた個体が害獣として農水産物にダメージを与えないよう、適切に狩猟するなどして人間社会とのバランスを保つことを目指したものといえるでしょう。
鳥獣保護管理法の対象となる動物と、そうでない動物は?
コウモリが鳥獣保護管理法で守られていることを述べましたが、同法で対象となる動物は「鳥類または哺乳類に属する野生動物(ネズミ・モグラ類、海棲哺乳類含む)」と定められています。
ただしこれには例外があり、同法によると「この法律の規定は、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣又は他の法令により捕獲等について適切な保護若しくは管理がなされている鳥獣であって環境省令で定めるものについては、適用しない。」ともしています。
つまりは人間にとって著しいリスクがあるとされる動物はその限りではないことが明示されており、保護対象外の動物もピックアップされています。
その内訳は、
・ドブネズミ
・クマネズミ
・ハツカネズミ
・ニホンアシカ
・アゴヒゲアザラシ
・クラカケアザラシ
・ゴマフアザラシ
・ゼニガタアザラシ
・ワモンアザラシ
・ジュゴンを除く海棲哺乳類
とされています。
陸上ではネズミ類3種のみが保護対象外であり、すなわちコウモリを含むほぼすべての鳥獣は許可なく捕獲・殺傷すると罰を科せられることになるといえるでしょう。
鳥獣保護管理法の例外、「捕獲許可制度」とは?
とはいえ、コウモリのように保護対象でありながらも人間生活にとって高いリスクをもたらす害獣は可能なかぎり迅速に駆除する必要があるのも事実です。
そこで同法では、例外措置として「捕獲許可制度」を導入しています。
これは鳥獣、または鳥類の卵が学術研究上必要な場合や、鳥獣が農作物に被害を与えている場合などに限り、捕獲や採取の許可を与えるというものです。
認可は環境大臣や各都道府県知事が出し、コウモリ駆除における当該許可もこの定めが根拠となります。
鳥獣保護管理法では「狩猟」の規定が別に設けられており、こちらは48種類の鳥獣について捕獲と採取が許可されていますが、「捕獲許可」については制限がありません。
許可された期間内であればいつでも捕獲・採取を行うことが可能で、害獣としてのコウモリに対してはこの規定が適用されます。
鳥獣保護管理法で守られたコウモリを駆除するのに最適な季節と時間帯とは?
コウモリを駆除するのに捕獲または採取が必要な場合、捕獲許可を申請して認められる必要があることを述べました。
駆除業者が許可を受けていたり、あるいは許可を得た個人が駆除作業を行ったりするケースもありますが、法に抵触しないよう非殺傷性の方法で駆除を実施することもあります。
その方法の基本は巣から群れを追い出し、そして再び戻ってこられないよう処置することです。そのためにはコウモリの習性に合わせて、適切な時期と時間帯を見計らって実施する必要があります。
一年のうちコウモリ駆除に適した時期は二回で、最初は4月~6月の春から初夏、次は9月~10月の秋にかけてのシーズンが該当します。
つまり冬眠から覚めて積極的に捕食行動を起こす時期と、冬眠に入る前に発情し体力を蓄える時期が駆除に適しているといえるでしょう。
反対に夏場は自分ではまだ飛べない幼獣がおり群れのすべてを追い出せないこと、冬場は冬眠のため刺激を与えても反応が鈍く十分な効果を得られないため、駆除には適していません。
また、日中はやはり眠って過ごしていることから刺激に十分反応せず、巣から追い出すためには日没頃以降のコウモリが捕食行動のために飛び回るようになる時間帯に駆除処置を実施するのがセオリーです。
まとめ:鳥獣保護管理法で守られたコウモリの駆除は専門業者に依頼するのがおすすめ!
コウモリをはじめとする野生動物を守りつつ人間社会とのバランスを保つための、鳥獣保護管理法について概略を解説しました。
コウモリは人間にとってリスクをもたらす害獣ですが、法律の保護下にあることから個人での駆除はハードルが高い部分があるといわざるを得ません。
そこでおすすめなのが、コウモリ駆除の専門業者に依頼することです。
プロフェッショナルとしての高度な知識と技術を用いて駆除後の処置まで安全に実行し、専門家の見地から防除のための適切なアドバイスも得られます。
もしコウモリの害で悩むことがあれば、このような専門業者への相談も視野に入れてみてはいかがでしょうか。