日本のコウモリは5つの科に分類。 身近なアブラコウモリも駆除が必要な理由を解説

はじめに:日本でポピュラーな種類のコウモリは害獣の一種!駆除が必要とは
コウモリは地球上に1,000近くもの種類がいるとされ、哺乳類のなかでも一大集団を形成しています。
日本列島に棲息しているコウモリは既に絶滅したものを除いて34種あるいは35種といわれてきましたが、帯広畜産大学が2023年8月8日に発行したリーフレット『とかちの野生動物 コウモリ』によると奄美大島で新たに発見された「シナアブラコウモリ」を含めて36種が現存するとしています。
以外にも多くのコウモリが日本国内にもいることがわかりますが、そのほとんどが絶滅の懸念がある希少種です。これには調査と情報の不足も起因しているといいますが、開発等による自然環境の変化も大きく影響していると考えられています。
一方、街中や住宅地など人間の生活圏でしばしば多くのコウモリを目にすることもあります。これはほぼ「アブラコウモリ」という種類で、別名を「イエコウモリ」ともいうように人家の屋根裏などに営巣するケースの多いことが特徴です。
アブラコウモリの成獣は灰色がかった茶色い体毛で、体長およそ5㎝、翼を広げた長さは約18~24㎝、体重5~10gほどとたいへん小柄な体躯をしています。
夜行性であることや冬眠する習性が知られ、人間にとっては害虫となる蚊やユスリカなどを一晩で一匹あたり500匹ともいわれる量を捕食することからかつては益獣の一種とも考えられました。
しかしコウモリは多種多様で危険な病原菌を保有しており、その体に寄生しているノミやダニなども死に至る病気を媒介することが判明しています。また、羽音や鳴き声が群れによって増幅されるが騒音害や、堆積した排泄物が悪臭の原因となったり建物にダメージを与えたりする糞尿害となって人間生活に悪影響を及ぼすことから、アブラコウモリは駆除が必要な害獣の一種です。
しかしながら駆除のためには野生動物保護の法律を遵守しつつ、コウモリ特有の習性から作業に適したタイミングを見計らうことが求められます。
本記事では日本列島に棲息しているコウモリの科を概観し、もっともポピュラーで駆除が必要なアブラコウモリについて作業実施に適したタイミングや関連する法律について解説します。
日本のコウモリは5つの科に分類される
先にコウモリは世界に1,000種類ほど存在することを述べましたが、大きくは「オオコウモリ」と「ココウモリ」に分かれます。
オオコウモリの分類はオオコウモリ科の1科のみで、フルーツなど植物性の食性を持ち、視力が発達していることからそのほとんどが超音波を用いた位置測定(反響定位:エコーロケーション)を行いません。
対してココウモリには17科があり、その多くが昆虫や植物を主食にしていますが吸血性のものは3種のみです。また、自ら超音波を発してその反響により暗闇でも空間を認識して飛行したり、食糧となる昆虫の位置を把握したりする能力を有しています。
日本国内に棲息しているコウモリには5つの科があるとされますが、現在も調査や研究が継続していることから今後新たな種が発見される可能性もあると考えられます。
以下、日本におけるコウモリの、5つの科の概要を見ていきましょう。
オオコウモリ科
オオコウモリ科をなすオオコウモリはその名の通り大型のコウモリで、なかには翼を広げた長さが2mに達するものもいます。
このサイズ感からおそろしいイメージを持たれがちですが、実際にはフルーツや花蜜を主食とする植物食性の動物です。
日本では琉球列島や小笠原諸島といった南方に分布しており、既に絶滅した「オキナワオオコウモリ」、そして現存する「クビワオオコウモリ」と「オガサワラオオコウモリ」が確認されています。
オヒキコウモリ科
日本におけるオヒキコウモリ科のコウモリは「オヒキコウモリ」と「スミイロオヒキコウモリ」の2種が存在し、オヒキコウモリは昆虫を主食とするコウモリのうち日本最大のサイズです。
オヒキコウモリの体長は約8~9cmほどで、2014年までに北海道・埼玉県・神奈川県・山梨県・京都府・兵庫県・三重県・広島県・高知県・愛媛県・福岡県・熊本県・宮崎県の13道府県で発見事例があります。
カグラコウモリ科
カグラコウモリ科は日本で1種、「カグラコウモリ(ヤエヤマカグラコウモリ)」のみです。
体長は7~9cmほど、体重は20~30gで神楽の際に用いる面のような顔がネーミングの由来といいます。
西表島では1万5,000頭を超える巨大な群れをなしていることが知られ、昆虫の中でも甲虫類を好んで捕食するのが特徴です。
日本のカグラコウモリはほぼ固有種と考えられていますが、遠隔地のタイ南部に分布していることも確認されているため、コウモリ集団の移動の問題が研究課題の一つとなっています。
キクガシラコウモリ科
キクガシラコウモリ科は非常に古いコウモリの種で、ヨーロッパで発見された最古の化石は約5600万年前~3390万年前の始新世という地質時代のものです。
日本では「キクガシラコウモリ」「コキクガシラコウモリ」「オキナワコキクガシラコウモリ」「ヤエヤマコキクガシラコウモリ」に大別され、それぞれに固有種を含むさらに細かい種に分かれています。
キクガシラコウモリは体長約6~8cmで、鼻の周囲のヒダである鼻葉が菊の花のように見えることに由来するネーミングです。
ヒナコウモリ科
ヒナコウモリ科は日本でもっとも多くの種類がいるコウモリで、多数にわたるため以下に属名のみを挙げます。
すなわち、「ホオヒゲコウモリ属」「クビワコウモリ属」「ヤマコウモリ属」「チチブコウモリ属」「ウサギコウモリ属」「ユビナガコウモリ属」「テングコウモリ属」「ヒナコウモリ属」「アブラコウモリ属」の9属です。
日本の住宅地や都市地域など人間の生活圏でもっともよく見られるというアブラコウモリ(イエコウモリ)もこの科に属しており、絶滅の危険性が高く都市部での発見事例のあるヒナコウモリも同様です。
たとえ害獣でもコウモリ駆除の際には気を付けるべき法律がある
日本国内におけるコウモリの種類について、その科と属を中心に概観しました。
本来は自然の洞穴や樹の洞などに営巣する動物であるため、生態にはまだ謎の多い部分があり今後も新種が発見される可能性もあるかもしれません。
そんななか、ヒナコウモリ科のアブラコウモリが突出して人間の生活圏で暮らしていることは先に述べた通りです。
既に周知の通り人間の健康にさまざまな悪影響を及ぼす恐れのある害獣ですが、実は野生動物保護の法律で守られていることから駆除の際にも許可無く捕獲したり殺傷したりすると処罰の対象となります。
該当する法律の正式名称は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」といい、一般的には「鳥獣保護管理法」の通称で知られコウモリだけではなく多くの野生動物が対象となっています。ちなみに、日本で捕獲・殺傷の方法を問わず駆除に許可が必要ない動物はネズミのみです。
鳥獣保護管理法に違反すると1年以下の懲役あるいは100万円以下の罰金という重い刑罰の対象となります。
そのためコウモリ駆除の基本的な方法は捕獲や殺傷ではなく、まずは営巣場所から追い出して洗浄し、再び侵入させないように出入口を塞ぐといった施策が中心となります。
絶滅の懸念がある希少種はもちろん、個体数の多いアブラコウモリについてもこのように保護されていることから、関連する法律を遵守しつつ適切な駆除作業を行うには高度な専門的スキルと知識が求められるため、個人によるコウモリ駆除はハードルが高い面があるでしょう。
まとめ:絶滅の危険がある種も含まれるコウモリの駆除は専門業者に依頼するのがおすすめ!
日本国内に棲息するコウモリは5つの科に分類されること、人間の生活圏に巣を作って健康被害の原因ともなるアブラコウモリは駆除が必要な害獣であることなどを解説しました。
哺乳類のなかで唯一自力による飛行が可能なコウモリは世界中に分布する大集団ですが、その反面絶滅の危機に瀕している種も多く保護を必要とする動物という側面もあります。
また、人家などに棲みついているのを発見した場合には可能な限り速やかに巣から追い出し、再侵入を阻むことが望ましいものの、冬眠などコウモリ特有の習性や野生動物保護の定めにより、駆除作業にはスキルと知識両面での高いハードルが存在しています。
そこでおすすめなのが、コウモリ駆除の専門業者に依頼することです。
プロフェッショナルとしての高度な知識と技術を用いて駆除後の処置まで安全に実行し、専門家の見地から防除のための適切なアドバイスも得られます。
もしコウモリの駆除で悩んだり、棲みついたコウモリに希少種の可能性を感じたりすることがあれば、このような専門業者への相談も視野に入れてみてはいかがでしょうか。