もしコウモリに噛まれたら? かかるべき診療科と症状の例、駆除の必要性を解説
はじめに:コウモリは駆除が必要な害獣! 病原菌のキャリアであることに要注意
コウモリといえば夜にひらひらと舞うことから不気味な印象があり、創作では吸血鬼の眷属といったイメージも強いのではないでしょうか。
実際に動物の血を吸うコウモリは皆無ではありませんが、世界に1,000種類近くいるもののうち現存する吸血性のコウモリは3種と圧倒的に少数派です。
日本列島におよそ34種類棲息しているというコウモリのなかには吸血性のものはおらず、家屋やビルなどに棲みついて人間の生活圏に近い場所に現れるのは「アブラコウモリ」と呼ばれる種がほとんどです。
アブラコウモリはヒナコウモリ科に属する小型のコウモリで、体長は約5cm、翼を広げた長さは18~24cm、体重は5~10g程度で1~2cmの隙間があればたやすく屋内に侵入するといわれています。
大人のアブラコウモリは灰色がかった茶色い体毛をしており、冬眠する習性があるものの気温の高い地域では冬期でも休眠せずに活動するケースも増加しています。
アブラコウモリは昆虫類を主食としており、一匹で一晩に500匹ともいわれる害虫(蚊やユスリカ)を捕食することから人間にとって益獣と考えられることもあります。
しかし実際にはノミやダニなどさまざまな病原菌を媒介する生物が寄生していたり、群れが立てる鳴き声や羽音が騒音の害となったり、人間の健康に深刻な悪影響を及ぼす可能性がある害獣の一種です。
したがってコウモリが住居やビルなどに棲みついているのを見つけた場合には、適切な方法とタイミングで確実に駆除することが必要です。
アブラコウモリは都市部など人間の生活圏に入り込んで棲息しているパターンが多く、とても身近な野生動物であるといえ、それだけに予期せぬコンタクトをしてしまうこともあるでしょう。
先に日本列島には吸血性のコウモリがいないことを述べましたが、上記の理由からアブラコウモリに噛まれてしまうという事態も皆無ではありません。
そこで本記事では海外の事例も含め、コウモリに噛まれた場合にはどう対処してどの診療科を受診するべきか、そしてどのような病気を発症する可能性があるのかについて解説します。
※以下、本記事ではアブラコウモリを単に「コウモリ」と表記します。
もしコウモリに噛まれたら? どう応急処置してどの診療科を受診すればいい?
まず、何らかの事情でコウモリに噛まれてしまった場合、傷口を流水でよく洗って止血しましょう。
この時にごしごしと傷口をこするのではなく、可能であれば水道水などの清潔な流水で15分ほどやさしく洗い流すことが理想です。
噛まれたのがアブラコウモリであれば傷口はさして大きくないことが予想されますが、一か所だけではないケースも考えられるため冷静に確認することが大切です。
先に述べた通りコウモリは病原菌のキャリアであるため、応急処置をしたら可能な限り早期に病院を受診しましょう。
受診科は皮膚科・外科・感染症内科などが一般的ですが、受診前に電話でコウモリに噛まれた旨を伝えておくとよいでしょう。総合病院であれば最適な診療科を案内してくれると考えられます。
このように、もしもコウモリに噛まれたらともかくも水で洗って迅速に病院を受診するのがセオリーです。
コウモリに噛まれる・接触することで発症する恐れのある病気例
コウモリが病原菌を運ぶことがあると先に述べましたが、日本ではまだ噛まれたことで重篤な症状を発症したり死亡したりした例は多くありません。
しかし海外渡航の際にそうした危険にさらされるおそれもあり、国内でも徐々に事例が増加していることから、コウモリとの接触は細心の注意を払うべき問題の一つです。
そこで以下に、コウモリに噛まれたり接触したりすることで発症する恐れのある病気を3例挙げました。なお、日本国内ではアブラコウモリとコンタクトする確率が圧倒的に多いと考えられるものの、海外での例も含めて「コウモリ」は種の総称として用いています。
狂犬病
現代日本では撲滅されたといわれる狂犬病ですが、海外ではチスイコウモリに噛まれて発症、死亡したケースが報告されています。
狂犬病にはワクチンがありますが発症すると致死率はほぼ100%とされ、非常に危険な病気の一つです。
病名に「犬」とつきますが哺乳類が中間宿主となることから、コウモリもそのキャリアの一つです。日本国内においてコウモリに噛まれたことで発症した例は報告されていませんが、海外から伝播する可能性も否定できないため十分な注意が必要です。
ハンタウイルス感染症
コウモリに噛まれた場合、咬傷から入る病原菌だけではなく接触による感染症にも注意する必要があります。
ハンタウイルス感染症はコウモリの体にひそむダニや寄生虫が媒介する病気で、感染すると腎不全を発症します。
これは日本でも死亡事例があり、たとえコウモリに噛まれたわけではなくとも接近や接触で病原菌に感染するおそれがあることを十分に認識することが重要です。
日本脳炎
日本脳炎は突然の高熱・頭痛・嘔吐などにはじまり、意識障害や麻痺などを引き起こす感染症です。後遺症が残ったり、最悪の場合は死に至ったりすることから幼少時に計4回ワクチンを打っています。
この病気を媒介する生物は蚊が有名ですが、実はコウモリも日本脳炎ウイルスを保有していることが判明しました。
ワクチンの効果が期待できる病気ではありますが発症すると重篤な症状になる可能性も否定できないため、これもよくよく警戒を怠るべきではありません。
危険な害獣であるコウモリの駆除に適したシーズンと時間帯は?
万が一コウモリに噛まれた場合の対処や発症する可能性がある病気例を見てきましたが、危険な野生動物であることから住宅など人間の生活圏内に営巣しているのを発見した場合には迅速な駆除が必要です。
しかしコウモリは発見次第いつでも駆除できるわけではなく、最適なシーズンと時間帯を的確に見計らって実施しなくてはなりません。
それというのもコウモリは法律で保護されており、許可を得ることなく捕獲したり殺傷したりすると処罰の対象となるからです。
そのためコウモリの駆除法は住処から追い出して営巣場所を洗浄し、再び戻ってこないように侵入口を塞ぐといったことが基本的な処置となります。
その際にはコウモリを巣から完全に放逐する必要があり、活動量が低下したり自力で飛ぶことのできない幼獣がいたりする時期は駆除に向いていません。
コウモリを適切に駆除するのに適したシーズン年間を通じて二回あり、4月~6月の春から初夏にかけての時期と、9月~10月の秋期が相当します。
これはコウモリが冬眠から目覚めて活発に捕食行動を再開する暖かい時期と、発情期を迎えて冬眠前に栄養を蓄えるための時期を意味しています。
上記以外の時期が駆除に向いていないのは、冬眠中はほぼ眠って過ごしていることから巣から追い出そうとしても反応が鈍く、夏場には自分の力で飛ぶことができない幼獣がいるため群れのすべてを放逐するのが難しいことが理由です。
さらに夜行性であるコウモリは日中をほぼ眠って過ごし、夕方以降に餌である昆虫を求めて飛び回ります。そのため春~初夏や秋の駆除に適したシーズンでも、日中の明るいうちは反応が鈍く追い出すために刺激を与えても十分な効果を得られません。
したがってコウモリの活動が盛んになる日没頃以降のタイミングを見計らって放逐のための処置を実施するなど、生態と習性に合わせた駆除施策が必要です。
まとめ:噛まれると危険なコウモリの駆除は専門業者に依頼するのがおすすめ!
万が一コウモリに噛まれた場合に、行うことが望ましい応急処置とかかるべき診療科、そして発症する可能性のある病気の例などを解説しました。
日本の都市部や住宅街などで見られるのはおとなしくて小柄なアブラコウモリにほぼ限られ、実際に噛まれるという事故の件数は多くないと考えられます。しかしその一方で死亡事例を含む重篤な病気を発症した例も皆無ではなく、まだ日本では報告されていないコウモリ咬傷由来の病気が引き起こされる可能性を否定できません。
そのためできる限りコウモリに近付かないことはもちろん、もし住宅などに営巣しているのを発見した場合には適切なタイミングを捉えて迅速に駆除することが望まれます。
ですが上記の理由からコウモリに近付かねばならない状況も発生する駆除には危険が伴い、個人で実施するにはリスクとハードルの高さがあるといえるでしょう。
そこでおすすめなのが、コウモリ駆除の専門業者に依頼することです。
プロフェッショナルとしての高度な知識と技術を用いて駆除後の処置まで安全に実行し、専門家の見地から防除のための適切なアドバイスも得られます。
もしコウモリの駆除を検討しているのならば、このような専門業者への相談も視野に入れてみてはいかがでしょうか。