コウモリはどうしてぶら下がる? その習性の理由と駆除のポイントを解説

はじめに:ぶら下がる習性のあるコウモリは家に棲みつく害獣! 駆除が必要な理由とは?
もしコウモリの姿を思い浮かべてみてくださいといわれたら、闇夜にひらひらと舞う姿や、あるいは洞窟などの暗い場所に翼をたたんだ状態で逆さまにぶら下がる様子などをイメージするのではないでしょうか。
自分の力で自由に飛ぶことができる唯一の哺乳類であるコウモリは、世界に約1,000もの種類がいるとされており、特徴的な習性の一つに「ぶら下がる」ことが挙げられます。
日本列島で見られるコウモリの数は一説によると絶滅危惧種を加えても34種ほどとされていますが、そのうちもっともポピュラーな「アブラコウモリ」もやはり逆さまにぶら下がって過ごす動物です。
アブラコウモリは人間の生活圏に多く棲息し、住宅地や都市部などで一般的に目にする種類といえます。
このアブラコウモリはコウモリの中でも「ヒナコウモリ科」という小型の種類に属しており、翼を広げた長さは18~24cmほどですが体長は約5cm、体重は5~10g程度ととても小柄です。
別名を「イエコウモリ」ともいうように天井裏や屋根の隙間、あるいはエアコンの室外機の裏や雨戸の戸袋など、住宅各所に営巣するケースも多く見られます。
昆虫を主食とすることから大量の蚊やユスリカを捕食し、これらは人間にとっては害虫であるためコウモリを益獣と捉えることもあります。しかしコウモリにはノミやダニが寄生していたり、群れがあげるキィキィという鳴き声やバタバタと飛び回る際の羽音が騒音の害となったりするなど、人間の健康や生活に悪影響を及ぼす害獣の一種に位置付けられています。
また、コウモリが出す大量の排泄物は異臭の原因となったり建物にダメージを与えたりするだけではなく、カビ菌の一種を含んでいることから万が一そのホコリを吸い込むと深刻な健康被害を及ぼす可能性もあるでしょう。
したがってコウモリが人間の生活圏内に巣をつくって棲みついているのを発見した場合には、できるだけ早く適切に駆除することが重要です。
本記事ではコウモリの「ぶら下がる」という独特の習性について詳しく見つつ、駆除が必要な理由や実施に適した時期・時間帯、関連する法律や営巣防止のポイントなどについて解説します。
※以下、本記事ではアブラコウモリを単に「コウモリ」と表記します。
コウモリはどうしてぶら下がる?
ではそもそもコウモリは、なぜぶら下がって過ごすのでしょうか。
さまざまな理由がありますが、その一つにはコウモリが進化の過程で獲得した哺乳類でありながら飛行できる能力が関係しています。
コウモリは空を飛ぶために非常に軽量な身体構造をしており、したがって羽ばたくため以外の筋力は強くありません。そのため鳥類のように自身の脚で枝の上に止まることができず、ぶら下がるのがもっともエネルギー効率のよい体勢となったのです。
また、高所にぶら下がることで天敵から身を守る効果もあると考えられています。コウモリ自体は戦う能力が低く、あらかじめ外的の侵入を阻む環境に営巣する生存戦略からも、ぶら下がることが有効だったといえるでしょう。
コウモリがぶら下がる特殊なメカニズムとは
一口に「ぶら下がる」といっても、コウモリが多くの時間をその姿勢で過ごせるのはさまざまな特殊なメカニズムのおかげです。
以下、コウモリはなぜぶら下がったままで過ごすことができるのか、その特徴的な理由を3例見ていきましょう。
特殊な腱で自動ロック
実際にぶら下がることをイメージした場合、止まり木のようなものを下から掴み続けるためには相当な筋力を要するように思われます。
ところがコウモリは常に力を込めてぶら下がっているわけではありません。それにはコウモリの持つ特殊な「腱」の構造が影響しています。
コウモリの脚の腱にはノコギリの歯のような突起があり、足で物体を掴むとその突起が内部で噛みあい、いわば自動的にロックされるのです。
そのためコウモリは一旦足で止まり木などを掴むと、力を入れなくてもそのままぶら下がる姿勢をキープすることが可能です。
このような機能のおかげで睡眠や冬眠の最中も落ちることがなく、仮に死亡してもそのままぶら下がり続けていることもあるといいます。
頭に血がのぼらない
仮に人間が逆さまにぶら下がるとほどなく頭に血がのぼって苦痛を感じ、ずっとそのままの姿勢でいることはできません。
しかしコウモリはぶら下がったまま睡眠をとったり冬眠したりすることから、長期間にわたって逆さまになっても頭に血がのぼらないことがわかります。
これはコウモリの体の軽さと血液量の少なさが理由です。他の動物も頭部への急激な血流増加を避けるために毛細血管が網の目のように張り巡らされていますが、コウモリは特に重力による血流集中の影響を受けにくいことから、ぶら下がったままでも頭に血がのぼりません。
反転する特殊な飛行術
コウモリは頭を上にして飛行しますが、そのまま止まり木などに下から掴まってぶら下がります。
このスムーズな機動をどのように実現させているのかは長らく謎でしたが、観察によって解明した研究があります。
これによるとコウモリは飛行から止まり木に掴まる瞬間、片方の羽を折りたたんでもう片方の羽を伸ばし、慣性を巧みに利用することで反転してぶら下がることが判明しました。
これはフィギュアスケートの選手が腕を体に寄せることで回転速度をあげたり、ダイバーが体を捻って方向転換したりする原理と同じです。
コウモリはこうした精妙な身体操作によって、最小限の動きでぶら下がることを可能としています。
ただし排泄時は翼の前足でぶら下がる
コウモリは多くの時間を逆さまぶら下がって過ごしており、生まれたばかりの赤ちゃんも同様です。
ただし排泄する際には翼の前足でぶら下がり、上下を反転させます。
コウモリの翼はもともと手であり、長く伸びた指の骨の間に飛行用の膜が張っている構造となっています。
しかしコウモリのこのような習性が原因で特定の箇所に糞尿が溜まりやすく、後述する害となる点に注意が必要です。
コウモリの糞尿害は深刻! 駆除に適したシーズンや時間帯はいつ?
コウモリがぶら下がる習性とその仕組みを見てきましたが、そのために巣の周辺には排泄物が溜まりやすくなることも特徴です。
コウモリの糞尿は前述した通りさまざまな害をもたらすことから、これを解消するためには排泄物の清掃だけではなく住宅などに棲みついたコウモリの群れを根こそぎ駆除する必要があります。
コウモリの駆除は住処から追い出すことと、再びそこに戻ってこないよう侵入口を塞ぐ措置が基本となります。
コウモリは通称「鳥獣保護管理法」で守られた野生動物であり、無許可で捕獲したり殺傷したりすると処罰の対象となるためです。
ただしコウモリ駆除にはもっとも適したシーズンと時間帯があり、これ以外の時期だと十分な効果を得られない点に注意しなくてはなりません。溜まった排泄物の清掃・洗浄は基本的にどの季節や時間帯でも可能ですが、根本的な対策であるコウモリの駆除に最適なタイミングを把握しておきましょう。
まず、コウモリの駆除に適した時期は年に二回です。一回目は4月~6月(春~初夏)、次は9月~10月(秋)時期で、これにはコウモリの習性に由来する理由があります。
コウモリは餌である昆虫が少なくなる冬の間を眠って過ごしますが、春以降には虫の動きも活発化するため冬眠から目覚めて活動を開始します。コウモリを駆除するためにはまず住処からすべて追い出す必要があるため、このように行動的になる時期を狙って実施する必要があるのです。
夏場は出産の時期で、自力では飛べない幼獣がいるため駆除には適していません。しかし秋には幼獣も飛べるようになり、成獣は発情期を迎えるうえ冬眠に備えての捕食活動が盛んになるため、これも住処からの放逐に適したシーズンです。
また上記のシーズンのうち、実際の駆除作業は夕方以降が適しています。それというのもコウモリは夜行性であり、昼間は巣でぶら下がり眠って過ごしていることから反応が鈍いためです。餌の昆虫を求めて飛び回る活動時間帯は日が沈む頃から夜明け方前頃までの間であり、コウモリの活動時間帯をうまく捉えたタイミングで駆除する必要があります。
まとめ:ぶら下がる習性のあるコウモリ駆除は専門業者に依頼するのがおすすめ!
コウモリが逆さまにぶら下がって過ごす理由やその仕組み、そしてその習性に由来する排泄物の害などについて解説しました。
コウモリの排泄物は堆積して悪臭を放ったり、それにネズミやゴキブリなどの有害な動物がたかったりします。また糞尿が建物の構造物にシミをつくったり、あるいは腐食させて設備にダメージを与えたりするケースも皆無ではありません。
コウモリの駆除は巣から追い出して清掃・洗浄を行い、再び戻ってこないようにあらゆる侵入口を塞ぐ措置が必要です。しかしコウモリは巣への執着が強く、何度も戻ってこようとすることからそもそもコウモリがぶら下がれないような対処も重要でしょう。
そこでおすすめなのが、コウモリ駆除の専門業者に依頼することです。
プロフェッショナルとしての高度な知識と技術を用いて駆除後の処置まで安全に実行し、専門家の見地から防除のための適切なアドバイスも得られます。
もしコウモリの害で悩むことがあれば、このような専門業者への相談も視野に入れてみてはいかがでしょうか。